みんなちがって、みんないい ことば塾と野外塾

 おおきな木では、店のオープンと同時に、「ことば塾」と「野外塾」の二つの会員制の活動を始めました。あれから24年。今年4月から第25期を迎えます。

 ことば塾は当店2階のイベントスペースで、月に二回、親子で僕の絵本ライブを楽しんでもらったり、リズム遊びやことば遊びをしたり、工作やおやつ作りなどをして過ごす時間です。一歳半から会員になっていただくことができます。

 野外塾は毎月、岐阜市内の山の中でデイキャンプをしたり、昆虫採集や水の生き物採集をしたり、ときには泊りがけでキャンプに出かけたりという特別プログラムも年数回あります。こちらは、年長さんから中学生までが会員対象年齢になります。

 で、そもそも何でこういう活動を始めたのかというと、子どもたちを大人の価値観で縛るのではなく、子どもの目線に立ったプログラムを用意して、あくまでも子どもたち自身の意思で参加できる自由な活動をしたいという思いがあったからです。ですから、塾とは言ってもとくに決まったカリキュラムがあるわけでもないし、時間割もめあてもありません。あるのは、誰にも縛られない自由に過ごせる「時間」と、子どもがワクワクするような魅力的な「空間」と、いっしょに過ごせる「仲間」。僕はこれを「三つの”間”」と呼んでいますが、この三つが子どもが育つ環境として一番大事なものだと考えています。

 野外塾のデイキャンプを例にとると、集合時間と解散時間、そして一日を過ごすフィールドは決まっていますが、その間をどう過ごすかはみんなそれぞれです。参加してくれたみんなが喜んでくれそうなことをいろいろ用意はして行きますが、中にはそんなことには目もくれず、ひたすら川で遊んでいたり、ずっと焚き火のそばでおしゃべりをしていたり、落とし穴作りに没頭していたりする子もいます。でも、それでいいんです。退屈していないということは、「空間(場)」の力であり、気が合う「仲間」の力だったりするわけですからね。

 「人はみんな違っていていいんだ。がんばりすぎないで、ぼちぼちいけばいい」。これは僕のオリジナル曲『子どもたちよ』の一節。「すずと、小鳥と、それからわたし、みんなちがって、みんないい」。これは、昭和5年に26歳の生涯を閉じた金子みすゞの詩『わたしと小鳥とすずと』の一節。そうです、「みんなちがってみんないい」んです。これって、ことば塾や野外塾の基本なのかもしれません。

 学校では、「クラスをまとめる」という言い方がよくされますが、それってどういうことなんだろうとちょっと考えてしまうことがあります。みんな違うのに、ひとつにまとめようとすれば、気が向かない子も当然出てくるだろうし、やりたくてもできない子もいる。まとめようとすれば、はみ出す子も出てきます。野外塾ではまとめようなんて意識はそもそもありませんが、学校とは違って、いろんな年齢の子がいるので、無意識のうちに助け合って遊んでいるという光景が見られたりします。喧嘩はたまにありますが、陰湿ないじめのような行為は今のところ見たことがありません。

 ときどき、小学校などで絵本ライブ公演をすると、「人権についての話を子どもたちにしてほしい」と言われることがありますが、この「みんなちがってみんないい」という考え方、大げさかもしれませんが、これ、人権の基本なんじゃないかと僕は思います。

おおきな木 杉山三四郎