前川喜平さんの講演会に行ってきました

 先日、前川喜平前文部科学省事務次官の講演会に行って来ました。当初200人規模で予定されていた講演会でしたが、あれよあれよという間に参加申し込みが増え、会場を岐阜市民会館大ホールに変更して行われ、結局1400人もの人が集まりました。皆さんご存知の通り、前川さんといえば、昨年、加計問題が国会で取り上げられていたころ、参考人として出席し、加計学園の獣医学部新設の認可を巡って、「総理のご意向」だとする文書が文科省内に存在していたことを、「あったものを、なかったことにはできない」と証言された方です。

 お話を聞いて一番印象に残ったのは、自分の出世のために官邸や政治家先生たちの顔色ばかり伺っている官僚が多い中、前川さんはちゃんと国民の方を向いて、自分の信念を貫いて来られた方なんだということです。教育というのは、個人のためにあるもので、国家のためにあるのではない。そして、すべての人に公平かつ平等になされなくてはいけないんだ、とおっしゃっていました。そしてその視点を弱者やマイノリティーにも向け、夜間中学やフリースクールなどにも力を注いで来られた方であることを知りました。

 今、国会では森友学園の国有地取得に関する決裁文書改ざんが発覚し、首相夫人である安倍昭恵さんの関与が改めて取り沙汰されていますが、加計問題の方は、安倍首相と加計孝太郎理事長は腹心の友であることから、「総理のご意向」という圧力が官邸からかけられたという話です。その渦中にいたのが前川さん。「行政がゆがめられた」とはっきり証言されていましたね。安倍首相は、「岩盤規制をドリルでこじ開ける」とか何とか言ってるけど、それは国民みんなのためではなく、ごく一部の、もっと言ってしまえばお友だちのためだったの?って話なわけで、全くもってひどい話。国家権力による行政の私物化もいいとこです。

 最近、前川さんが名古屋市の中学校に招かれて授業をしたことに対して、文科省から質問状が送られたという事件もありました。テレビの取材で前川さんは、「教育現場への国家権力による不当な介入である」とおっしゃっていましたが、誠にその通り。おまけに、これも二人の自民党議員が文科省に対して圧力をかけていたということが明るみに出ました。こんなふうに国家による監視が当たり前のように行われるようになったら、自由で民主的な教育は成り立たなくなります。

 また前川さんの話ですが、この4月から小学校で教科化される道徳の教科書に、「星野くんの二塁打」という話があるそうです。記憶がちょっと曖昧なのですが、こんなような話です。9回裏1アウトでランナー2塁。1点を取れば勝てるという場面で、星野くんがバッターボックスに立ちます。コーチのサインは送りバント。ところが星野くんはサインを無視しヒッティングに出て二塁打を打ち、勝利した。これをどう思うかという訳です。野球というチームプレイでは、自分が犠牲になって試合を有利に運ぶということも作戦としてあるわけですが、これを、個人の自由よりも自己犠牲(自己抑制)の方が美しいという結論に導いていこうという魂胆があるとしたら、それはちょっと問題です。

 森友問題も加計問題もこれからどの程度真相が明らかにされていくのかさっぱり分かりませんが、国会で答弁される方々は、ぜひ、前川さんのように上からの圧力に屈することなく、ちゃんと国民の方を向いて、真実を述べていただきたいと思います。

おおきな木 杉山三四郎

 

※画像は、日本の教育行政を支えてきたお二人の文科省官僚による対談です。おすすめします。