社会性を身につけていない大学生たち

 暑い暑いとみなさん悲鳴を上げておられましたが、その暑い夏もあっという間に過ぎてしまいました。夏が大好きな僕はちょっと寂しいです。

 おおきな木野外塾では、子どもの夏休み中に四つのお泊まりプログラムがあります。一泊二日の昆虫採集キャンプ、三泊四日の無人島サバイバルキャンプ、二泊三日のサマーキャンプ、三泊四日の沖縄ざまみツアーです。自然好き、キャンプ好き、子ども好きの僕としてはどれも楽しいお仕事であります。今年はどれもお天気にもギリギリ恵まれて、無事にやり終えることができました。

 でもね、残念ながらいい思い出ばかりではありませんでした。先日終えたばかりのざまみツアーでは、嫌な思いをさせられました。座間味島で二泊したのですが、その民宿で某有名私立大学の潜水会という20名ほどの団体といっしょだったことです。彼らは夜遅くまで飲んで騒いで、しょっちゅう部屋は出入りするわ、廊下は走るわで、われわれみんな(こちらは13名)睡眠不足になってしまいました。岐阜から沖縄の離島までの長旅、そして海でシュノーケリングをしたりで大人も子どももみんな疲れていたのに、彼らのおしゃべりや笑い声は夜中1時を過ぎても続き、ほとほと参りました。部屋によっては「一気コール」までしていたようです。

 さすがにこれを放っておくわけには行かず、翌日、民宿のご主人と奥様に伝え、注意してもらったのですが、次の夜も改善の気配はなく、廊下からも話し声が聞こえてきます。ふとんに潜り込んでやり過ごそうとしたのですが、ついに我慢の限界を超えて、さすがの私もブチ切れて、10名ほどの男女が集結している向かいの部屋に怒鳴り込み、「お前らもう大人なんだから社会性も身につけろ」とまで言ってしまいました。その場では、「すみません」と言ってやがて解散したようですが、次の日、彼らと顔を合わせても、誰ひとりとして謝る人間はいませんでした。

 岐阜に戻ってから、この件についてフェイスブックに八つ当たり的投稿をしたところ、結構な反響がありました。「勉強だけできても、社会性が身についていないなんて恥ずかしい」とか、「社会性のなさは若者だけでなく、おじさん、おばさんにもある」とか、「旅の恥はかき捨てという日本の悪しき文化かも」とか、「親のしつけの問題で、学校の問題ではない」とか、いろいろご意見をいただきました。

 でも僕は、自立・自律をさせないような仕組みになっている日本の中学、高校の学校のあり方にも問題があると常々思っています。高校までは理不尽な校則に縛られ、自分の頭で考えて行動し、自分の責任で判断をするということが認められていません。アルバイト禁止、おしゃれ禁止、男女交際禁止、ただ受験勉強さえ頑張っていればいいといった環境で社会性など身につくわけありません。そんな彼らが大学生になってようやくタガを外されて自由になって、いきなり世の中に放り出された結果がこれなんです。

 今、『ブラック校則—理不尽な苦しみの現実』(東洋館出版社)という本を読んでいますが、中学・高校の実態はひどいもんです。日本の学校では、子どもの人格が認められていないばかりか、人権侵害ともいえる教師によるパワハラ、セクハラが平気で行われていたりするのです。大人も子どもも同等の立場でものを言い合える関係性を作ることが、子どもにとっても大人にとっても幸せなことなのではないかと思うのですが。

おおきな木 杉山三四郎