今年6月にスイスに行った時のこと、ルツェルンという町で、予約していたホテルへの行き方が分からなくて駅の観光案内所に入りました。3人の女性スタッフがいて、一人がパソコンで調べてくれている間、あとの二人は何やらにこやかにしゃべっています。そして僕に、「Where are you from?」と聞いてきて、「Japan」と答えると、二人はがっかりした表情を見せました。「えっ、なんでなんで?」と聞くと、どうやら二人は僕が何人かという当てっこをしていたらしく、「私は中国人、彼女は韓国人だと言ってたのよ」とのことで、見事二人ともハズれたわけです。「ごめんなさい」と謝っていましたが、ま、そんなもんなんでしょうね。自分たちでさえ区別つきませんからね。
そんなよく似たお隣同士の国々ですから、仲良くお付き合いをしていきたいものですが、ここのところ、日本と韓国の関係がよくありません。韓国の文在寅大統領が対日強硬策をとっていて、歴史問題を蒸し返してきたことが発端だったのではないかと思うのですが、それに対する日本政府の対応が火に油を注ぐような形になってしまって、ややこしくなってしまいました。
両国民の意識調査では、日韓関係が良好であることを望む人が圧倒的に多いのですが、日本政府の対応は売られた喧嘩を買うような姿勢を見せて、「けしからん!」と言ってみたり、「無礼者!」と言ってみたり、政府の代表としてやってきている担当者を粗末に扱ったりと、わざわざ相手を怒らせるような態度を見せてきました。そして、歴史問題を争点にするのではなく、経済問題で制裁を加えるようなことまでしたわけです。詳しいことは僕には分かりませんが、海外メディアなどによると、日本と韓国が経済制裁の応酬を始めたら共倒れになるだけだと憂慮する意見も多数あるようです。
関係を悪化させていいことなどひとつもないと僕も思いますが、さらに火に油を注いでいるのが日本のマスコミです。テレビのワイドショーで、著名人が韓国人に対する差別的発言をしたり、メジャーな某週刊誌が嫌韓特集を組んだり、さらに、いっときはどこのテレビ局でも文在寅大統領の側近の疑惑追及を毎日毎日特集したりと、よその国を叩いていったいどうするの? 何か展望はあるの? と言いたいです。その間、日本では厚労省の政務官の収賄疑惑があったのに、こちらはほとんど報道されていないのはどういうわけ?? 何かあるのではと勘ぐってしまいます。
人種差別を助長し扇動するような行為をヘイトと言いますが、ヘイト本の多くは根拠のない「事実」をでっちあげて被差別者を叩くような内容で、読むに忍びない、聞くに耐えないものです。でも、こうした記事を読んで溜飲を下げるような人間もたくさんいるんでしょうね。だからヘイト本がそれなりの売り上げを上げていて、それに乗っかる形で、大手のテレビ局や出版社がその矜持も忘れて差別的な報道をする。これは一番やってはいけないことでしょう。それによって生まれるものは何もないわけですから。そう思いませんか?
8月、日本人女性観光客がソウル市内で韓国人の男性に暴力を受けるという事件がありましたが、それに対する韓国国民の反応はその男性に対する非難でした。これには正直ホッとしました。国家間の関係が難しくなってきているときに、人種に関係なく人間としてやってはいけないことはいけない、恥ずかしい行為だとはっきりコメントできる韓国国民に敬意を表します。
おおきな木 杉山三四郎