トンボ天国と子ども時代が蘇った大人たち

 フェイスブックを始めて8年。当店では、イベントの告知などで公式ページを作っていますが、普段利用しているのは僕の個人ページで、「友達」は現在約900人弱。ほぼ毎日目を通していますが、投稿されている写真を見るのは楽しいものです。その中に、野鳥や昆虫などの生き物の写真をしょっちゅう撮ってアップされている方があり、1年ほど前に、ぜひこの方のお供をさせていただきたいと思い、メールをしてみました。そうしたら、ぜひぜひということで案内していただいたのが、岐阜県笠松町にあるトンボ天国です。

 トンボ天国は木曽川の河川敷にある自然保護地域で、面積はそれほど広くはないのですが、6つの池(たぶん河跡湖)があり、里の自然がたくさん残っているところです。初めて行ったのは20年以上前でしたが、ショウジョウトンボやチョウトンボといった図鑑でしか見たことがなかったトンボがたくさん飛んでいて感動したことを覚えています。

 それ以来の久々のトンボ天国。ここで、その方、箕浦先生に初めてお会いしました。近くに住んでおられて、毎日のようにトンボ天国に通って生き物の観察を続けておられる先生のお話を聞いていると、生き物を見る目も変わり、それ以来数回訪れています。先日(11月19日)も現地で先生とお会いして一緒に歩きました。トンボは少なくなる時期ですが、交尾をするアキアカネやオオアオイトトンボなどがいました。と言っても、僕にはイトトンボの種類を判別する能力はありませんが、先生には普通に分かるんですね。野鳥はいろいろいました。これは僕にも分かります。モズ、シジュウカラ、コゲラ、ジョウビタキ、エナガなどに会えました。12月になればさらに種類は増えてくるそうです。

 箕浦先生は岐阜大学工学部の元教授で、現在は名誉教授という肩書きをお持ちなのですが、ご専門以外にも自然分野や芸術分野にも多才なすごい方です。でも僕とちょっとした共通点がありました。

 子どものころから蝶々好きで、標本もいくつか作っていた。そのころの標本箱は紙の菓子箱だったので、全部虫に食われて跡形もない。結婚をして子どもができると、子どもの影響で自分の虫捕り熱が再燃、自分の方がのめりこんでしまった。

 これ、僕も全く同じです。でも、そののめり方が違います。標本の数が、ドイツ箱という木製の本格的な標本箱50箱ぐらいはあるそうです。僕も大人になってから採集した蝶はドイツ箱に標本を収めていますが、僕は15箱。比べものになりません。標本を作る作業はなかなか手間がかかるので、僕の昆虫採集は店を始めてからは徐々に終息していきましたが、先生は捕虫網をカメラに代えてずっと続けてこられたんだと思います。一方、僕の方は野外塾を始めたおかげで、蝶だけではなく、その他の昆虫や魚なども観察したり採集したりする機会があり、今でも興味だけは持ち続けています。

 その野外塾でも、箕浦先生や僕と同じような道をたどっておられるお父さんやお母さんを見かけます。虫捕りや魚捕りなどのプログラムもあるんですが、子どもよりも夢中になってる人が結構いますからね。きっと子どもと一緒に自然の中に足を踏み入れることで、自分の子ども時代が蘇るんでしょうね。好奇心旺盛な子ども時代に戻れたらこんな素晴らしいことはありません。そして、こんな風にして身近な自然環境を次の世代に残していければいいのではないかと思います。

おおきな木 杉山三四郎