みなさんはNHKの大河ドラマはご覧になってますか。我が家では、初めの2〜3回を見て脱落するというパターンが多いのですが、今年の『麒麟が来る』は毎週楽しみに見ています。明智光秀、斎藤道三、織田信長など、ご当地美濃の国ゆかりの武将たちの話ですから、親近感が持てるし、舞台となる地名もほぼ分かるので、時間や距離の感覚が現実的にイメージできる、といったことが惹きつけられる要因なんだと思います。
岐阜市は今年、この『麒麟が来る』とタイアップして大河ドラマ館を岐阜公園内にオープンさせたり、岐阜城の展示もリニューアルしたりして、多くの観光客を当てにしていたわけですが、新型コロナ騒動でどこも一時休館となり、本来ならばもっと賑わってるはずでした。僕は、コロナ以前に見に行きましたが、『麒麟が来る』の時代背景や人物の相関などが分かりやすく展示されていて、ドラマをさらに面白くしてくれました。
NHKの大河ドラマで歴史ファンになる人も多いと思うのですが、今年は、僕もそのにわか歴史ファンの一人です。といっても戦国時代限定なんですが、日本史上じつに不条理極まりない時代で、ゆえに人間ドラマとしての面白さがあるわけです。
下克上の代名詞とも言える斎藤道三は、三大梟雄(きょうゆう/残忍でたけだけしい人 *広辞苑)の一人にも数えられるほどの人物。「国盗り」のためには手段を選ばず。策略をめぐらして守護の土岐氏を追放し、美濃の国主にまでのし上がっていきます。
その子である義龍は妾の子であり、実の父も道三ではないのではという疑いを持ち続けます。ゆえに、生涯道三に反目し、その道三に溺愛されていた、正室の子である二人の弟にはジェラシーを燃やし、仮病でおび
きよせて殺し、父も長良川の合戦で殺します。
織田信長もそうです。子どもの頃から「うつけ」とか「たわけもの」と呼ばれるほどの不良少年だったので母から疎んじられて育ったと。それで、母に大事に育てられた弟の信勝に対しずっと嫉妬していて、ゆえに信長も病気を装って信勝を誘い、殺しています。
まあこんな話ばっかりなんですが、これらも諸説あるところがまた歴史の面白さかもしれないですね。同じ歴史上の記録でも、それを、誰がどちらの側に立って記録したかによって記述に差が出るわけですからね。
にわか歴史ファンとなった僕も『帰蝶』(諸田玲子著/PHP文芸文庫)とか『信長』(坂口安吾著/土曜社)といった歴史小説を最近読みましたが、当然ながら、これも、どこまでが史実で、どこからが脚色なのかは分かりません。作家や脚本家たちは諸説ある史実のいずれかに寄り添って書いてはいるんでしょうが、登場人物の出自や相関にも違いがあります。幾多ある記録や書状などの文献から史実を読み解いていく歴史学者の仕事って改めてすごいと思います。
さて、岐阜城がある金華山ですが、当店の裏山といってもいいくらいの馴染みの山で、岐阜市のランドマークでもあります。岐阜城にまだ行ったことな〜いという方、ぜひ一度訪れてください。その天守閣からの眺めは格別です。眼下に長良川が流れ、両岸に岐阜の町が広がり、遠くに御嶽山や北アルプスの山々、南は尾張との境となる木曽川が流れ、広大な濃尾平野の先に伊勢湾まで望むことができます。道三や信長でなくとも、天下を取ったような気分になれますよ。『麒麟が来る』は中断中ですが、大河ドラマ館は再開しております。
おおきな木 杉山三四郎