キャンプブームの中、山菜キャンプなのだ

 皆さんご存知かどうか分かりませんが、世の中では今や空前のキャンプブーム。週末ともなるとあちこちのキャンプ場は大賑わいで、平日や冬の間でも結構のキャンパーが来ているようです。何十年も前から、毎年当たり前のようにキャンプを楽しんできた身としては、これまた一体どうしたこと?という感じですが、昨年秋に野外塾で行ったキャンプ場で今まで見たこともないような光景が広がっていて、それを実感しました。ここには30年ぐらい前から行ってますが、立派なテントがびっしりと埋まっていて、こんな光景は初めてです。

 このブームは新型コロナウイルスが一役買ってます。海外旅行は行けないし、国内旅行でもいろんな意味で恐怖感があるし、ならば屋外で密閉が避けられるキャンプならいいんじゃないかということなんでしょうね。アウトドア用品の有名ブランドメーカーでは品薄が続いているという話もあるし、スポーツ用品店はもちろんのこと、ホームセンターまでも特設キャンプコーナーができているのでびっくりです。

 このブームの中、5月中旬に富山県の某キャンプ場に行ってきました。ここも30年ほど前から使っているキャンプ場ですが、満杯だったらどうしようと、数年ぶりに恐る恐る訪れてみました。すると、だーれもいません。ここにはブームは来ていないようでした。

 僕にとってこの時期のキャンプ最大の目的はというと「山菜」です。ここのテントサイトにはアサツキが雑草のように生えていて、山菜の上にテントを張っているようなものです。10分ほど歩いて行くと、秘密の谷があって、けもの道を踏み分けてクマに警戒しながら登って行くと、渓流沿いにワサビが群生しています。ウドがにょきにょき生えている場所にも遭遇。ギボウシもちょうどいいのがあちこちにあるしで、もう山菜の王国です。「雪国っていいなあ」とこの時期限定で憧れています。

 さて、その10日ほど後には、野外塾の「雪国の春キャンプ」に20数名の親子で行ってきました。場所は高山市荘川。ここも山菜の宝庫です。一番のお目当てはネマガリダケの竹の子。タイミングはバッチリで、子どもたちも藪をかき分けて竹の子狩りに夢中になりました。仕込みが大変ですが、皮むきも有志が集まってやりました。できた竹の子料理は信州流竹の子汁。僕が若かりし頃、長野県信濃町で居候をしていた家のご夫妻に教えていただいた食べ方ですが、これが今でも毎年この時期のお楽しみになっていて、野外塾でも恒例。たくさん作りましたが、完食でした。ここでは竹の子の他に、ワラビが一面に生えているところがあり、子どもたちはワラビにもしばし夢中。家にお土産に持って帰るんだと、ワラビの束を握っている子もいました。このキャンプでは、ウドやイタドリの天ぷら、クレソンのピザなどもいただきました。

 野外塾では、野生の力(ワイルドパワー)のことを「野力(のぢから)」という造語で呼んでいますが、山菜はまさに「野力」。これを食べて体力も付けています。そして、野に放たれた子どもたちは、チョウやガやセミなどの昆虫や、イモリやトカゲなども捕まえてきて目を輝かせていますが、これも「野力」です。

 キャンプ場に、「のんびりと自然の中で大人のキャンプを楽しみませんか」と張り紙がしてありましたが、僕の場合、自然の中にいると誘惑が多すぎて、子どもと同じでじっとしてはいられないので、当分「大人のキャンプ」はできそうにありません。

おおきな木 杉山三四郎