高山植物の宝庫アポイ岳に登ってきました

 みなさんはアポイ岳という山をご存知でしょうか。北海道の日高山脈の一番南にある山で、標高は810m。最近、NHKのテレビ番組で見たのをきっかけにちょっと気になっていて、「お、ここなら登れるんじゃね」ということで、9月中旬に行ってまいりました。

 新千歳空港からはレンタカーを借りて、日高の海沿いの道をひたすら走って襟裳岬を目指します。かつてはJR北海道日高本線が走っていたところです。途中、いくつかの道の駅に立ち寄ります。道の駅好きとしては、これも楽しみの一つです。ししゃもの町として有名な鵡川(むかわ)では、北海道特産のほっき貝のフライ定食を食べました。ほっき貝とは大きな二枚貝で、このあたりで貝といえばほっき貝のことなんだそうです。

 この国道235号線は昆布街道といってもいいような道で、海側は昆布干し場がいたるところにあり、山側は競走馬を飼育している牧場が広がります。そうでした、そうでした、日高といえば、昆布とサラブレッドですよね。改めて感心いたした次第です。

 そして、ナビに翻弄されながら襟裳岬に到着。北海道の地図を眺めていただくと、一番南側のとんがったところが襟裳岬ですね。そこから北に山を辿って行ったところにあるのがアポイ岳です。

 でも、襟裳岬から登ったわけではありません。国道235号線をまた戻って、様似(さまに)町にある登山口から登ります。このアポイ岳周辺は、地球深部の岩石である「かんらん岩」が露出する地域であることから、貴重な自然が保たれている場所ということで、ユネスコ世界ジオパークにも認定されています。登山道も整備され、登山口から登り3時間、下り2時間のコースタイムで、自分にはちょうどいいくらいです。

 5合目までは気持ちのいい林間コース。途中、ニホンザリガニが生息するという沢を渡りましたが、ザリガニを見つけることはできませんでした。エゾジカやコゲラやヒガラなどの野鳥には会えました。でも、期待していたクマゲラやシマエナガには会えませんでした。

 5合目からは尾根伝いに岩地を登って行きますが、標高300mぐらいなのにハイマツ帯となり、高山植物の宝庫となります。希少種である固有種もいくつかあって、アポイ〜と名前がつく高山植物がいくつもあります。もっといい時期に来ればいろいろ見ることができたんでしょうが、まだまだ頑張っている花もありました。アポイマンテマ、ヒダカミセバヤといった固有種にも初めて会うことができました。高々800mぐらいの低山なのに高山植物があるところは、さすが北海道です。

 頂上では、自然保護の調査をされている方にお会いしましたが、その方は、ヒメチャマダラセセリというアポイ岳周辺にしか生息しないセセリチョウの保護をされているんだそうな。登ってくる途中、登山道脇のキンロバイの株にネットがかけられているのを見ましたが、ヒメチャマダラセセリの幼虫が他の生き物に食べられないように守っているのだ、ということでした。

 とまあ、ちょっとマニアックな話が続きましたが、アポイ岳の魅力はそれだけではありません。5合目からの稜線は絶景続きです。鵡川方面から走ってきた海岸線と太平洋、そして日高の山々。今、自分は北海道の大地に立っているんだ〜と実感できます。頂上はなぜかダケカンバ林になっていて視界は広がりませんが、270°の海が見下ろせるのではないでしょうか。そして、ヒグマに出食わすこともなく、無事下山して参りました。

おおきな木 杉山三四郎