心と体のふれあいから言葉が生まれる

 先月は、おおきな木野外塾のことを書きましたが、今回は「ことば塾」のことを書かせていただきます。

 ことば塾も、野外塾と同様に、おおきな木の開店と同時に始めた活動です。あくまでも「子どもが主人公」の活動にしたいという思いで、発足当時、野外塾とことば塾を合わせて「こども塾」と呼んでいました。学校や学習塾などでは、子どもたちにあれもこれも教えなくてはいけないとカリキュラムや時間割がありますが、「こども塾」にはそれがありません。子どもたち自身が自分でやりたいことを見つける、大人はその手助けをしてやればいいんだ。そんなふうに考えました。

 現在、ことば塾の会員は3世帯6名。20年ほど前には40名ぐらいの会員がいたこともありましたが、働くお母さんたちがどんどん増えてきたこと、そして保育園だけでなく幼稚園も託児機能が増してきたことなどにより、平日の夕方に親子で参加することが結構難しい状況に変わって来たことが影響しています。それにこの3年のコロナ禍ですから、室内で濃厚接触バリバリのことば塾はちょっと敬遠されてしまいました。

 手前味噌になってしまいますが、僕のオリジナル曲に『この星にありがとう』という歌があります。

  手と手をつないで  顔と顔 微笑み

  生まれる言葉が  声になる あなたが

 そんな歌詞ですが、心と体のふれあいから言葉が生まれるんだ、そんな意味です。幼い子どもたちはいったいどんなふうに言葉を獲得していくのでしょうか。誰かが系統的に教えるわけではありません。親子のふれあいがあり、子ども同士でじゃれあって遊ぶという環境で自然に習得していくわけです。

 ことば塾で昔から続けている遊びがスキップゲーム。

スキップをしながら、「どてっ」とか「ぴたっ」とか「ぎゅーっ」といったオノマトペで、体を動かしたり、抱き合ったり、ウサギやカメになりきったり、そして、指名された子にタッチしたり、まさに、言葉が生まれるふれあいとまねっこのゲームです。

 そして絵本の時間。子どもたちに静かに読み聞かせるということはあまりしてなくて、いっしょに参加して歌ったり、叫んだり、体を動かしたりするような絵本がほとんどです。絵本の登場人物(動物)になりきって、劇遊びのようにまねっこをしてる子もいれば、僕の体によじ登ってくっつき虫になっている子もいます。「オレはジャングルジムじゃない!」と叫んでますが、こんなふれあいがまた楽しいんですよね。

 絵本を読んだ後には、おもちゃを作ったり、新聞紙や段ボールで遊んだりということをやっていますが、子どもたちは作ることが大好きです。新聞紙と段ボールはダイナミックな室内遊びの2大アイテムで、新聞紙のプールで泳いだり、段ボールで家や車を作って遊ぶ時間はほんと楽しくて、子どもたちは大興奮です。

 新型コロナの感染防止対策でマスク生活が続き、子どもたちはお互いの表情が見えなかったり、大声を出すことや触れ合うことも制限されてきました。様々な感性を育てる大切な時間を奪われてしまった子どもたちは、言語の発達や脳の発達にも影響が出ていると言われています。新型コロナが終息するなんてことは当面ありません。旧型のコロナやインフルエンザなどと同様、これからも付き合っていかなくてはいけません。いつまでも新型コロナを特別扱いするのをやめて、早くコロナ前の生活に戻さなくてはいけないと思います。

おおきな木 杉山三四郎