最近、また時どきマスコミやミニコミの取材を受けることが増えてきましたが、その時よく聞かれるのが、「どうしてこの店を始めようと思ったんですか? 『おおきな木』を始めることになった動機を聞かせてください」ということです。単純に言ってしまえば、僕は子どもが好きで、子どもと関わる仕事がしたかった、ということなんですが、もう少し突っ込んで言うと、「大人と子どもがいい関係でつながれる場所を作りたかった」ということがあります。
では、僕が思うその「いい関係」とは? 大人と子どもの関係というと、親と子、先生と生徒だったりしますが、その両者が、教育する側とされる側という関係ではなく、共に育つ関係、すなわち「共育」という関係であることが子どもにとっては大事なのではないかと思うのです。子どもに、ああしろ、こうしろと指図ばかりする親よりも、自分が興味を持ったことに一緒に付き合ってくれる親の方がいいんじゃないかと。親の方も、親子で一緒に楽しめることを見つけていけばいいのです。親子で共通の体験をして、感動を共にする時間をもっと持ってほしい、そんなふうに思います。
おおきな木が主催する野外塾もそんな時間を提供する場です。親子でいっしょに野山を歩いて、そこらに生えている草を食べておいしかったとか、川で遊んで、捕まえたエビやザリガニを食べたとか…。大人にとっても驚きがたくさんあると思います。子どものものだけにしておくのはもったいないです。そして、その親子で体験したことは生涯心の中に残っていきます。
絵本を読むことも同じです。親子で一緒に絵本を読んで、笑ったり、驚いたり、泣いたり、歌ったりしたことは、子どもにとってだけでなく、親にとっても楽しい記憶として残っていきます。子どもが字を読めるようになってくると、「自分で読みなさい」と突き放してしまう親も多いですが、絵本を読む時間も子どものものだけにしてしまうのはもったいないです。二人で感動を共にする共同体験が大事なんです。
僕が小学校時代に出会った先生で記憶に残っているのは、子どもたちとよく遊んでくれた先生です。プールで一緒に泳いでくれたり、ドッジボールで遊んでくれたり、昆虫採集に連れていってくれたりした先生がいました。もちろんその先生の授業も楽しかったです。我が子たちが小学校で出会った先生も、記憶に残っているのは一緒に遊んでくれたり、やんちゃな子どもたちをただ面白がって見てくれてた先生です。
親や先生以外にも子どもは成長過程でいろんな大人に出会います。そんな大人の存在も結構大きかったりします。自分の子ども時代を振り返ってみても、何人かあります。魚とりに連れて行ってくれた親戚の叔父さん。プロ野球のナイターに連れて行ってくれた、母親が営んでいたパン屋の常連のお客さん。母はおおらかな人柄だったので、店のお客さんや出入りしていた業者の人なんかも家族の旅行やキャンプにもなぜかくっついてきてたりしていて、そんな人たちにも僕は可愛がってもらってたような気がします。
こういう人たちをひとからげにして「謎のヘンな大人」と呼んでもいいと思いますが、子どもに対して、ああしろ、こうしろとうるさく注意するだけの大人でなく、ただ一緒に遊んでくれるだけの大人です。こんな「ヘンな大人」に僕もなれたらいいなあというのが、おおきな木がオープンした頃からの僕の願いでした。
おおきな木 杉山三四郎