熊本復興支援ライブに行ってきました(267号/2016年12月号)

 上空からの視界は良好でした。飛行機は瀬戸内海の島々の上空を飛び、別府湾のあたりから九州に上陸。やがて、いかにも火山という風貌の茶色っぽい山肌をした久住連山が眼下に現れ、阿蘇から熊本へと向かうにつれ機体は徐々に高度を下げていきます。すると、話には聞いていましたが、屋根にブルーシートがかかったままの家が所々に見えます。震災から半年経ってもまだまだ修理が追いついてないんでしょうね。

 熊本市内に「ぺぺぺぺらん」という名前の絵本屋さんがあり、結構古いおつき合いになるんですが、熊本で大地震というニュースが入ってきたとき、まず頭に浮かんだのが「ぺぺぺぺらんは大丈夫だろうか」ということでした。数日後にメールのやりとりをしたところ、いろいろ被害はあったものの、みなさんお元気ということでまずはひと安心。その後、復興支援絵本ライブができないかという相談をしていたのですが、今回ようやく実現をしたというわけです。有名人ならともかく、無名のおじさんが復興支援に来たと言っても誰も見向きもしてくれないわけですから、今回、「ぺぺ」の皆さんにはほんとうにお世話になりました。

 会場は二ヶ所。午前の部は震度7を二回も記録した益城町です。会場に向かう道々ではつぶれてしまった家や屋根にブルーシートがかけられた家があちこちに見られます。古びた家だけでなく、比較的新しい感じの家も損壊しています。住宅の耐震強度だけでなく、地盤の違いがかなり影響しているらしいです。会場となった立派な複合施設も、駐車場にひびが入って凸凹していたり、玄関下のステップが地面から盛り上がっていたり、室内の壁面にも修繕をしたと見られる鋲が打たれていたりと爪痕がいろいろと残っています。

 来てくれたお客さんは20名ちょっとぐらいだったかと思いますが、ゲームをしに遊びに来ていた男子小学生たち数名も会場に入ってきて、ステージの前にかぶりつきで見ていってくれました。子どもたちとのかけ合いも楽しく、お母さんたちもすっかり溶け込んでくれて、とてもいい雰囲気でライブができました。

 そして午後は南阿蘇村です。ここも被害が大きかったところで、倒壊家屋も多く、道路の亀裂も応急的に直してあるところが凸凹していたりします。崖崩れで押し流された阿蘇大橋の現場も見てきましたが、自然災害の恐ろしさをまざまざと見せつけられた感じでした。熊本と大分とを結ぶ国道と鉄道の復旧の目途は全く立っていないようです。仮設住宅地の近くにある会場でライブをしましたが、こちらではお客さんは10名ちょっと。和気あいあいなライブになりました。

 ライブの前日は熊本市内で泊まったので、熊本城もゆっくり見てきました。もちろん中は立入禁止ですので、ぐるっと一周して外から見物。本丸の石垣が崩れている映像がよく流れましたが、広大な敷地内の櫓や門や壕の石垣が崩れたり、塀が倒れたりで、無残な姿になっています。崩れた石を元の場所に戻す作業が始まっているようですが、復元には20年ぐらいかかるのではないかと言われているようです。

 今回の旅で感じたのは、熊本の人たちの感じの良さ。空港でもホテルでも街中の店々でも、とにかくみんなにこやかで優しいんです。そして、「ぺぺ」の方たちの温かい心遣い。新規事業の立ち上げでお忙しい中、付き合っていただきました。そんなこんなで、僕の方が元気をもらって帰ってきた復興支援でした。

おおきな木 杉山三四郎