子ども本位。大人目線の課題はいらない

 しつこいようですが、今年はおおきな木25周年。絵本屋を始めて、5月5日で25年になるわけですが、オープン以来ずっと続けてきた活動があります。それは、「ことば塾」と「野外塾」の二つの塾です。どちらも、頭にも心にも、そして体にもいい活動だとは思うのですが、いわゆるお勉強の塾ではありません。

 ことば塾は、1歳半から小学校低学年の子まで、いつでも好きなときにご入会いただけますが、野外塾は年長〜中学生を対象に年間登録制にしています。単発の活動ではなくて会員制にしてきたことは、今思えば本当に良かったと思っています。子ども同士のつながりはもちろんのこと、親同士のつながりも世代を超えてできたからです。

 では、そもそも何でこういう活動をしようと思ったのかということをちょっと振り返ってみたいと思います。僕はおおきな木を始める前、全国組織の子どもの英語教室を展開する会社に勤めていました。ここはただの英語教室ではなくて、英語劇をしたり、ダンスやゲームをしたりというグループ活動をメインに行い、全国規模のキャンプをしたり、海外とのホームステイ交流をしたりというダイナミックなこともしていました。僕はここで実に多くのことを学びましたが、ずっと自分の思いを遂げられないもどかしさを感じてもいました。

 それは、子ども本位の活動になっているだろうか、という点です。例えばキャンプだと、おそらくどこの学校でも民間団体でもそうだと思うのですが、いろんな課題が設けられて、プログラムが時間割で決まっています。そして、その課題を決めるのは大人で、大人の要望に基づいて、「今回はこれを課題にしよう」と組織的に決まっていきます。そこで僕は、子ども本位のキャンプにするには、まず課題をやめたらどうかと提案してきましたが、教育プログラムとしての大規模なキャンプでしたから、全く通らない提案でした。

 そんなわけで、そのころから僕が思い描いてきたのが今やっている「野外塾」のような活動でした。課題や目当ては設けない。時間割もない。いろんなプログラムを用意はするけど、参加するかどうかは子どもたちの自由。こんな行き当たりばったり的な塾に入会してくれる人がいったいどれぐらいいるのだろうかと不安でいっぱいでしたが、初年度に約40人の子どもたちが入会してくれました。

 やっていくうちに分かったことがたくさんあります。岐阜市内の山の中で一日放し飼いのようなデイキャンプでも、退屈してる子はほとんどいないということ。場の力ですね。とくに何か施設があるわけではなく、あるのはどこにでもある自然環境だけですが、子どもたちは本当によく遊びます。そしてその遊びを通して、自然に仲間を作ります。子どもって群れで育っていくんだなあとつくづく思います。いろんな年齢の子がいますから、ちょっと年上の子に憧れたり、年下の子の面倒を見たり、仲間に誘ったりという光景も見られます。

 野外塾には毎年100人前後の登録会員がいますが、昔に比べるとお父さんやお母さんの参加も増え、よその子どもたちとも気兼ねなく遊んだりしゃべったり、また、火を起こしたり料理をしたりのお手伝いもしていただいたり、そんなことをしながら親同士のつながりもできてきました。子どもだけでなく親も自由気ままに過ごせる場でもあるんですね。毎回、大家族のような賑やかさで楽しいひとときを過ごしています。

おおきな木 杉山三四郎