野外塾第一期生の結婚式に参列して

 先日、何年かぶりに結婚式というものに招いていただいて、夫婦で参列して来ました。最近の若い人たちはちゃんとした結婚式をしない人が増えているので、今回も軽いノリなのかなあと思っていたら、どうもそうではないらしいということで、礼服も新調して行って来ました。葬式や法事やらは時どきあるので礼服ぐらい持ってはいますが、なんせ10年以上も前に買ったやつなので、ぶかぶかスタイルなのです。見た目を気にするワタクシとしては最近の細身スタイルで決めたいので、思い切ったわけです。

 とまあどうでもいい前置きはさておき、結婚式を挙げたのは、おおきな木野外塾の一期生T君です。25年前に小学一年生で入会して来ました。夏のキャンプなどは麦わら帽子に虫とり網という、ほとんど僕の少年時代と変わらないスタイルで彼はやってきました。でも、虫とりが好きだったかといえば決してそうでもなく、鉄道大好き少年だったんですね。高学年になっても鉄道マニアは続いていて、貸切バスで出かけるときなどにバスの中でうたう歌は、何というタイトルだったか忘れましたが電車の歌ばっかり。名鉄電車や新幹線の車内アナウンスのモノマネなんかもよくやってました。

 そしてTくんはじつによく食べました。野外塾では食べるプログラムが結構あるんですが、料理が出来上がると真っ先にお皿を持って並んでいます。「働かざるもの食うべからず」という暗黙の「オキテ」があっても、そんなのはお構いなし。昔は高学年の子の人数も少なかったので、10人にも満たない人数で高学年キャンプをやってましたが、そのときに用意したラーメンの分け前が少なかったようで、「僕はだいたい家ではラーメンは5食は食べてる」と息巻いていたのを覚えています。そんなわけで、食べることが大好きな彼は、当然の結果としてどんどん体重を増やし、100キロ超えを果たし、学校ではいろいろあったようです。

 でも、鉄道好きの彼はまっすぐに生きました。運転士になるのが夢で、就職試験に向けて毎日ランニングをするなどのダイエットにも励み、見事JR東海に就職したのです。しかし、これまたいろいろあって運転士になる道は険しく、最近は高山線の車掌を続けていました。

 そんな彼はまた旅行好きでもあり、その旅の宿で出会ったのがこのたびの新婦。押しの一手で射止めたようです。何年か前の話ですが、彼と二人でスキーに行ったとき、僕が「お前、彼女いないの?」って聞いたところ、「いるわけないじゃないですか。僕はイケメンじゃないですから」という答えが帰って来て、「そんなこと分かってるけど、世の中イケメンなんてそんなにいないんだから、大丈夫だよ」と全く激励にもなっていないような助言をしたことがありました。それが功を奏したのかどうか分かりませんが、今回はちゃんと自信を持って口説き、彼女も彼の良さに気づいてくれて、二人の共通の夢まで見つけたようです。

 電車は好きでも飛行機は大嫌いだった彼が、3か月間の世界一周新婚旅行に旅立ちましたが、帰って来たら、二人でゲストハウスを経営するという事業を始めるとのこと。あんなに好きだった鉄道の会社に入り、高収入も得ていたと思うんですが、それを辞めてまで夫婦二人の夢を実現させる道を選んだのは大したもんです。愛の力は偉大ですね。脱サラ族の先輩として多少の責任も感じますが、楽しく有意義な人生を歩んで行ってくれることを祈念したいと思います。

おおきな木 杉山三四郎