虫採りで自然界の不思議をのぞいてみよう

 先月は、コロナの影響でキャンプブームになっているという話を書きましたが、ここ2〜3年、子どもたちの間で昆虫ブームが起きているような気がします。おおきな木では28年の間「おおきな木野外塾」という自然体験活動を行なっていますが、昔から虫好きはたくさんいましたが、最近とくに増えているように思います。

 何を隠そう、僕自身も子どものころは昆虫少年でした。小さいころはバッタ採りをするぐらいがせいぜいでしたが、小学3年生の夏休みの作品展で、同級生が出していた昆虫標本を見てから蝶々にハマっていきました。その標本箱にあったルリタテハ。濃紺と褐色が入り混じった黒っぽい地色に、ルリ色の帯模様。こんなきれいな蝶がいるんだと感動しました。ちょっと郊外に出かけていけば出会える普通種ですが、子どもにとっては珍しかったし、たとえ見つけたとしても飛翔力がすごいので虫採り網に入れるのは至難の技なのです。

 岐阜市には、名和昆虫博物館という虫好きな人たちが集まるところがあって、そこで、本格的な補虫網や、標本にする道具も一式手に入れ、高学年になると友だち同士で、電車やバスを使って遠くまで採集に出かけるようなります。標本箱には憧れていた珍しい種類も増えていきました。しかし、僕の蝶々熱は中学2年ごろには覚めてしまい、実家を離れるころにはその標本たちはすべて標本虫にやられて粉々になっていました。

 でも、やがて第二ブームがやってきます。ちょうど長男が生まれたころだったと思うのですが、小学生のときにいっしょに採集に行っていた友だちがまだ採集を続けていることを知り、誘われて長野県や山梨県まで採集に行きました。子どものときとは違って機動力があるというのは強みですね。図鑑でしか見ることがなかった垂涎の蝶に出会うことになって蝶々熱が再燃しました。今だから言いますが、当時、長野県方面に出張に行くことが結構あったので、採集シーズンになると車にはちゃんと補虫網が積んでありました。

 そして、今の仕事をするようになってからはあまり休みも取れなくなって、標本作りはやめてしまいましたが、子どもたちと一緒に虫探しを楽しんでいます。子どもたちの一番人気はやはりカブト、クワガタですが、ハンミョウやハムシなどの小さな甲虫類にも眼が行く子も結構います。その刺激も受けて、最近僕も小さな甲虫やカメムシなどの美しさに惹かれています。図鑑で調べてみても同定はなかなか難しいのですが、ルーペで覗いてみると実に神秘的で、惚れ惚れしてしまいますよ。

 先日、中日新聞(中日こども文庫)でもご紹介した「むしとりにいこうよ!」(はたこうしろう作/ほるぷ出版)という絵本ですが、虫好きのはたこうしろうさんが子どものころの体験をもとに描かれています。お兄ちゃんにくっついて虫採りに行ったものの、弟くんの目には虫の姿は全く入ってこなくて、「虫なんていないよー」なんて言ってます。でも、お兄ちゃんは虫がいそうな木や草を知っていて、タモを使ってガサゴソやると、ハムシやゾウムシやオトシブミなどの小さな虫たちが網に入ってくるんですね。自然の中に入れば必ず何かの虫がいるわけですが、それに出会えるかどうかは「虫を見つける眼」が必要です。虫好きな子たちは、この絵本のお兄ちゃんのような行動をとっています。

 自然界は不思議に満ちていますが、虫採りをすることは、子どもたちにとって「センス・オブ・ワンダー」を体験する格好の遊びなのではないかと思います。 

おおきな木 杉山三四郎