夢の世界ってどうなってるの?

 またまた新しい年を迎えました。コロナ騒ぎがなかなか収まらないなか、さて今年はどんな年になるのでしょうか。昔の人は、初夢にどんな夢を見るかでその年の運勢を占ったということで、今でも耳にする「一富士、二鷹、三茄子」という縁起がいい夢ベストスリーは江戸時代の頃からあったようです。富士山や鷹は何となく縁起がいい感じはしますが、3番目の茄子(なす)のどこが縁起がいいのかよく分かりません。その当時はナスは高級野菜だったのかもしれませんね。「成す」に掛けているという説もあるようです。

 それはさておき、皆さんはいい夢を見ておられますか。僕が見る夢はほとんど悪い夢ばかり。一番多いのは、迷路のような屋敷に迷い込んでトイレを探す夢。『もっちゃう もっちゃう もう もっちゃう』(土屋富士夫 作・絵/徳間書店)という絵本がありますが、それと同じようなことが起きています。トイレを探していろんな部屋の扉を開けるんですが、「えーっ、ここでするのー?」といった場所ばかり。この絵本の主人公は子どもだけど、僕は大人なのでお漏らしはしませんけどね。どうもすみません、新年早々尾篭な話で…。

 他によく見る夢は、何かに追い詰められている夢。子どもたちを引率して海外に行かなくてはいけないのに、大勢の子どもたちとキャンプをしていて、ろくに用意もできてない状態で空港に着いたものの、集合時間はとうに過ぎていたという夢です。おそらく、何かの原稿の締め切りが迫っているのに、何も閃かないといった状況において見ているのかもしれません。

 僕の夢には子どもたちがしょっちゅう登場しますが、これは仕事柄でしょうね。僕の言うことなど誰も聞いてくれなくて、「みんな集まれー」と言っても誰もそばに寄ってきてくれない夢とか…。次の日、野外塾や絵本ライブがあったりするときに見てるのかもしれませんが、本番ではここまでひどいことは起こらなくて、楽しいひと時を過ごしてホッとしています。

 たまにいい夢も見ます。珍種の蝶々に次々出会う夢とか、美女に囲まれている夢とか。でも、いい夢は目が覚めたときのがっかり感が半端ないですよね。「なんだ、夢か。ここにこんな蝶がいる訳ないよな」、「そうだよ、オレがそんなモテるわけないわな」と、現実と向き合わなくてはいけませんからね。

 今年はトラ年、ということでご紹介したい絵本が、『とらのゆめ』(タイガー立石 作・絵/福音館書店)。我が家では、息子が幼少の頃に好きだった絵本なので、思い出の一冊です。主人公はトラのとらきち。なぜか緑色をしてます。表紙には木が3本描かれていて、よく見るとその木の緑色の部分がトラの形をしています。宙に浮いた立方体の物体が溶解してとらきちに変化し、夢の世界へ出て行くという不思議な絵とストーリー。池で遊んでお日様に照らされると、とらきちはスイカのように変化したかと思うと、徐々にだるまさんに変身。でも、とらきちは自分が変身しただるまさんとバイバイするんですね。もう訳が分かりません。

 ま、この訳が分からない展開を見せるのが夢の世界なのですが、ポップアーティストのタイガー立石さん(1998年に56歳で亡くなられています)の手にかかると、この不思議な世界を紙の上にちゃんと具現化してしまうんですね。ひょっとしたら、夢の時間を生きる幼い子どもの頭の中ではこんな映像が流れているのかもしれないと思ってしまいます。

おおきな木 杉山三四郎