「野力(のぢから)」で育つ子どもたち

 おおきな木では、自分の趣味(?)も兼ねて、野外塾という活動を続けてきました。当店の開店と同時に始めたので、4月から第29期を迎えることになりました。僕の思いはただひとつ。「子どもを自然の中で思いっきり遊ばせたい」、これだけです。

 毎月、四季折々のいろんなプログラムを用意していますが、1月には、岐阜市の最高峰 百々ヶ峰(どどがみね/標高418m)の麓に広がるながら川ふれあいの森のキャンプ場を拠点に「冬のデイキャンプ」を開催しました。寒くなると参加者も少し減りますが、それでも総勢40人弱の親子が集まりました。寒いのでたき火をガンガン燃やします。薪は全部現地調達。多少濡れていようが、頭と体を使えば燃えます。このたき火で料理もします。たき火で焼きたい食材をみんなそれぞれが持ち寄ってくることになっているので、「持ち寄りたき火料理」と言っていますが、ソーセージ、ピザ、焼きイモ、焼き鳥、おもち、焼きおにぎり、干物、ラーメン、カレーライス、ポップコーン、チーズフォンデュ…、みんなが何を持ってくるのかいつも楽しみです。

 虫好きの子たちは冬でも虫さがしに夢中になります。朽木を崩したり、腐葉土を掘ったりして、冬ごもりをしているいも虫(幼虫)や成虫を探ります。宝さがしをしているみたいなもんで、大人もハマります。この日も、一番のおめあてのクワガタの幼虫や成虫越冬をしているコクワガタも発見されました。その他の甲虫類も出てくれば、ハチやムカデなんかも出てきます。

 野外塾では毎回いろんなネタを用意はして行きますが、大人も子どももどんな風に時間を使おうが基本自由です。学校の行事のような時間割もなければ、「めあて」もありません。必要なのは3つの「間」だけです。自由に過ごせる「時間」、楽しく過ごせる「空間」、そしていっしょに過ごせる「仲間」ですね。

 コロナ禍においても野外塾はできるかぎり休まず続けてきましたが、こんなときこそ子どもたちに必要なのは、体力や免疫力をつけることだと僕は考えています。学校ではマスクやら消毒やらを強要されていますが、雑菌を遠ざけるようなことばかりやっていては免疫力はついていきません。まず、天気の良い日には紫外線を浴びて外で遊ぶことです。でこぼこ道を歩いたり、木登りをしたり、海や川で泳いだり、泥んこの中で遊んだりして体力をつけていくのが子どもです。

 また、歌ったりしゃべったり、泣いたり笑ったりすることも大事です。思いっきり呼吸をして喜怒哀楽を表現することも元気の元ですからね。今、みんなマスクという環境で、言語の発達が遅れている乳幼児が増えているという研究報告をされている方がありましたが、これは十分にあり得ることだと思います。言語は音声だけでなく、体全体でコミュニケーションをすることで獲得していくわけですから、唇の動きや顔の表情はとくに大事な要素です。そんな乳幼児にマスクをつけさせろと発言した大臣がいましたが、とんでもない話です。

 野外塾では、「自然の中で遊ぶこと、それが子どもたちの体力と生きる力を育てるのだ」という思いで、「野力(のぢから)」という造語を使っていますが、子どもたちに必要なのはワクチンよりも「野力」なんじゃないでしょうか。先日の「冬のデイキャンプ」では雪がうっすらと積もっていて、子どもたちは、僕が用意した遊びネタよりも雪合戦やそり遊びに夢中。そんな彼らを見ていて、つくづくその思いを強くしました。

おおきな木 杉山三四郎