絵本や読み物などについて、きまぐれに書き連ねています。
おかしえんのごろんたん
おくやまれいこ 作・絵
双葉社 1200円
この本が入荷してきた時、急に昔の記憶が呼び戻されました。これまでほとんど思い出すことがなかった、子どものころに何度も読んだ本。表紙を見るだけで、内容まで思い出されました。
しかし、読み返して見ると、かわいらしい絵とは裏腹に、何か恐ろしい感覚が。
子ども心には、「全員がシマシマの服を着せられる」という怖さもわかっていながら、それよりも「お菓子をいくらでも食べられる国」の方に魅かれていたのかもしれません。
それにしても、国に馴染んだ子どもたちが、身の回りのことを全てやってもらっている様子を、少し気味が悪く感じるのは今も昔も同じでした。
色鮮やかでかわいく、美味しそうな絵が魅力的なことも、何度も手にした理由のひとつでしたが、それがまさか朝ドラ「なつぞら」のモチーフになった方の作品だったとは。子どもの頃に彼女の作品と出会っていたのだと思うと、ちょっと誇らしい気持ちにもなります。
2019.10.6(スタッフ みか)
もりのゆうびんポスト
原 京子 作
高橋和枝 絵
ポプラ社 1100円
冬休み、おじいちゃんとおばあちゃんの家に泊まりにきていたまゆは、近くの森の中でポストを見つけます。
「ゆびんポスト てがみはこちらにいれてください だれでも どぞ。 もりのともだちより」
見えない相手とのお手紙のやりとり。なんだかちょっとわくわくします。お手紙をポストに入れたら、次の日に見にいくのが楽しみになります。
へたな字や間違いだらけの文も、お手紙のうち。ポストに手紙を見つけると、とっても嬉しくなるのです。
私は手紙を書くのが好きで、子どもの頃から今に至るまで、手渡しの小さな手紙や贈り物に添える手紙、ポストに入れる長い手紙などいろいろな手紙を書きます。カバンにはだいたいレターセットと切手とスティックのり。大人になってからは、相手が気負わないように、私の自己満足だからとお返事を求めることはしなくなってしまいました。
でも、まゆとコンタは、お互いにお手紙をもらいたくて、書きたくて、楽しい毎日を過ごします。お手紙の相手がわかってからは、「はい、このあいだのおへんじだよ」と手渡しもしました。顔を合わせても、一緒に話をしても、やっぱり手紙は特別です。
高校生の頃。クラスは同じでも一緒にいるグループが違った子と、あるときからほぼ毎日手紙を交換するようになりました。毎日顔を合わせるけれど、手紙だけの間柄。なんだか嬉しい日々でした。わかるわかる、二人の気持ち。
本来、手紙は遠くの相手にも届けられるものなのに、まゆとコンタのポストは、まゆが家に帰ったら使えなくなってしまいます。そこでゆうびんやさんを買って出てくれたのが とりさん。幸い、まゆの家は、そんなに遠くない場所でした。まゆとコンタのお手紙交換は、続けられることになったのです。
こういう関係が、いつまでもずっと続けられたら素敵だけれど、だんだん回数が減っていってしまうのも仕方のないこと。なんて、大人になると考えてしまうけど、ふと思い出して久しぶりに書いてみるのもちょっとドキドキするし、貯まった手紙は宝物です。
夏休みにはまた、森のポストが使えますように。
2019.7.1(スタッフ みか)
ケチャップれっしゃ
ザ・キャビンカンパニー
すずき出版 1,404円
上からかければ、真っ赤なケチャップ。お料理に入ると鮮やかなオレンジ色。食べ物の上に顔やメッセージを書くこともできます。
そんなケチャップがどんどん出てくるケチャップれっしゃ。走ると、ケチャ ケチャ ケチャ。リズミカルに ケチャ ケチャ ケチャ。
途中、出会う動物たちに頼まれて、いろいろな食べ物にケチャップをかけます。たっぷりのケチャップをお願いされても躊躇なく、ぷぷぷぷっちゅー!と太っ腹。
ところが、調子よく走っていたケチャップ列車の前に巨大な何かが!あやうし、ケチャップれっしゃ!ケチャップれっしゃ、止まれるのかー?
作者は、ザ・キャビンカンパニーという二人組の絵本作家さん。たくさんの絵本を手がけられています。独特の絵や派手な色使いは、好みが分かれそうですが、細く扉を開けて、その世界をのぞき見てみるのもいいかも。
2019.4.29(スタッフ みか)
10ぽんのぷりぷりソーセージ
ミシェル・ロビンソン 文
トール・フリーマン 絵
もとしたいずみ 訳
ほるぷ出版 1,566円
タイトルの「ぷりぷり」を見ただけなのに、もう脳内がソーセージでいっぱい。焼く?炒める?茹でる?ここに出てくる10本のソーセージは、フライパンにのせられています。フライパンはコンロの上。コンロには火がついていて…じりじりじり。加熱されたソーセージは、どうなる?表面が割れて油が出てきたり、パチンとはじけたり。そして、ジュージューと素敵な音がして、香ばしくいい匂いがしてくるのです。…とこれは、私の妄想。
フライパンが熱くなってくると、10ぽんのうちの1ぽんがはじけます。すると、ソーセージは気づくのです。我が身の行く末。
ちょっぴりブラックなユーモアが、マザーグースやわらべうたのように、リズム良く軽快に描かれています。
さあ、10ぽんのソーセージがそれぞれどうなるのか、とくとごらんあれ!
さて、うちの冷蔵庫にソーセージはあったかな…?
2018.10.8(スタッフ みか)
てのりにんじゃ
山田マチ 作
北村裕花 絵
ひさかたチャイルド 1,404円
忍者の絵本はたくさんあります。忍者は実在したけれど不明なことも多く、さまざまなことがプラスアルファされて、絵本やまんが、テーマパークなどができているのです。
この「てのりにんじゃ」も、私は見たことがないけれど、いないともいいきれない。だって、忍者は実在したのですから。
てのりにんじゃは、今までイメージしていた忍者とは少し違います。大きさが、てのりぶんちょうほどのにんじゃなのです。それ以外は、だいたいイメージ通り。
でもこの絵本は、てのりにんじゃが戦ったり忍び込んだりするお話ではなく、力尽きた「てのりにんじゃ」が家に迷いこんできたらこうしましょう、という固く言うと「手引書」のような形です。
一方で、主人公の男の子とにんじゃが次第に仲良くなっていく様子も描かれていて、ほのぼのした気持ちになります。
修行のお手伝いをしたり、遊んでくれたり。私も、てのりにんじゃに守られてみたい。
修行は家にあるものをフル活用。その様子は、見ていてとっても楽しいのです。
いつのまにか、てのりにんじゃがいて当たり前の生活に。
でも、任務の合図があれば、てのりにんじゃは行ってしまいます。それはちょっぴり切ない。忍者には当たり前のことだから、割り切って、私のことなんて…いや、男の子のことなんて忘れちゃうのでしょうか。
大人の私も、てのりにんじゃ、うちに迷い込んでくれないかなあ。ついそんな風に思ってしまう、絵本です。
2018.8.20(スタッフ みか)